2016年11月17日木曜日

【レポート】地域デザインカフェ Vol.41 「コアラ弁護士の履歴書(仮題)」

 「弁護士過疎」の解消を目指す『すずらん基金法律事務所』が浦河町に『浦河ひまわり法律事務所』を開設して5年。41回目の地域デザインカフェは、この秋、2代目の所長として着任したばかりの小荒谷勝(こあらやまさる)さんをカフェマスターにお招きしてお話をうかがいました。


 日弁連や各地の弁護士会の支援により設立される『ひまわり基金法律事務所』は、現在全国53ヵ所で稼動しています。北海道には弁護士過疎地域に弁護士を派遣することを目的とした『すずらん基金法律事務所』が他の都府県に先駆けて設立され、「すずらんで研鑽を積んだ弁護士がひまわりに派遣される」という流れができているそうです。弁護士の偏在が顕著な北海道だからこそ必要とされた仕組みかもしれません。

 小荒谷さんは、昨春から1年半をすずらん基金のある札幌市で過ごし、この10年から浦河町に赴きました。法律の話よりもご自身のお話を聞かせてほしいという私たちのリクエストに、生い立ちから人生の岐路に渡るまで包み隠さず誠実にお話しくださった小荒谷さん。大学は法学部に進みましたが、在学中は空手道に専心していたそうで、就職先は法律の分野とは別の大手旅行会社。主に修学旅行の企画・営業・添乗を担当して日々慌しく過ごしているさなか、法律を身近に感じる職務上の出来事がきっかけで、法律を学び直したいという気持ちが沸き起こってきたそうです。

 しかし、旅行会社の仕事も充実のときを迎えており、再燃したものを胸に秘めながらの葛藤は5年にも及びました。最終的に小荒谷さんの決断を後押ししたのは、「一度しかない人生なのだから、チャレンジしてみたい」という強い気持ちだったそうです。


 12年間勤務した旅行会社を退社し、法科大学院制度を活用して金沢で再び学生となり、法曹の世界に進むことになりました。その頃から「法的な問題は人口規模にかかわらず存在する」という思いから、弁護士のいない(少ない)地域で仕事に就きたいと考えていたそうです。

 この日は小荒谷弁護士の前任者である葉山裕士さんも会場に姿を見せてくれました。相談窓口のなかった地域において、初代所長の葉山さんが一つひとつの相談に真摯に向き合い、相談者に寄り添ってきた5年間もまた、挑戦の連続であったと思います。

 葉山さんは年明けから岡山県備前市に任期付きで赴き、自治体のなかで弁護士としての専門性を発揮することになるそうです。「どんな業務が待っているかは行ってみなければわからない」と笑って語る姿に、葉山さんのチャレンジ精神を垣間見ました。


 葉山さんと小荒谷さんは共に道外の出身です。人生の節目における選択や決断、小さな町でこそ力を発揮したいという共通の思いがあって、弁護士として浦河へ赴任されたというお話をお聞きして勇気と感謝をいただきました。
 お二人の今後の活躍を応援させていただきたいと思います。
うらかわ「食」で地域をつなぐ協議会 石黒建一